「冷え」とはからだのどこかが冷たい,冷えていると自分自身で感じるときのことです。たとえばお腹や腰,ふとももや足先など触ってみると他の部分と比べて冷たいのがわかるものです。冷えは首~肩こり,胃腸虚弱や便秘,月経不順や女性不妊のときによく見られます。これら主訴に対してよく付属してみられる症状であり,また冷たいという不快感がこれら主訴が余計に悪く感じられている方が多く見られます。
目次
冷えのタイプ
からだのどこの部分が冷えを強く訴えているのか,またどんな感じの冷えなのかタイプ別に分けてみます。あるいは混合型であるかもしれません。
下半身が冷えるタイプ
冷えを訴えるものの中でもっともよくみられます。からだを温める力は健康な方と変わらないのですが,下半身を温める力が上半身のほうに偏ってしまっているタイプです。
- 上半身がほてりやのぼせの状態で,下半身が冷えてしまっています
- 30代以降の女性によくみられます
- 下半身全体というわけではなく足先だけだったり,かかと,くるぶしだけという方もいます
- 背中や腰,おしりの筋肉がこっていることが多くみられます
四肢が冷えるタイプ
健康な方よりもからだを温める力が総じて弱いタイプです。からだがこれ以上冷えないようにするため,交感神経が働いて血管を拡げないようにします(拡がった分だけ体温は逃げやすくなるからです)。その結果収縮された血管の中の血液の流れが悪くなってしまうという悪循環からなります。心臓から遠くて血管の細い手や足先から冷えはじめ,それが全身に拡がっていきます。
- 10~20代の若い女性によくみられます
- ダイエットなど食事からのカロリー摂取量が低い方にもよくみられます
- 日頃の運動習慣がなく筋肉量が少ないことが多いです
- 神経質なことやストレスなどによって交感神経が緊張している方にもよくみられます
内臓が冷えているタイプ
皮膚表面に近い所の血流がよいので手や足の血流はよいのですが,内臓やおなかなどのからだの中心部の血流が悪く結果内臓のほうが冷えてしまうタイプです。
- アレルギー体質や湿疹,アトピーの方によく見られます
- 少しぽっちゃり傾向の方にもみられます
- お腹に手術の経験がある方
- 女性では子宮内膜症や卵巣嚢腫など骨盤内の病気がある方
- 便秘があったり,トイレが遠い方またはついつい我慢してしまう方
全身が冷えているタイプ
あまりみられないのですが,基礎代謝がそもそも低く健康な方よりもからだを温める力はかなり低いです。手や足だけでなくからだの中心も冷えてしまっています。外気温度が下がって寒くなってくると普通からだは体温を上げようと自然に反応するのですが,この反射が鈍くてからだが冷えてしまうタイプです。
冷えに対する施術
からだをほぐして温めることをしなくてはいけないので,鍼と温灸にホットストーンや赤外線ランプを組み合わせます。
ほぐす
からだの筋肉がこり固まっていると,そのそばを走っている血管を締め付けることになります。体温は血液によって運ばれていくので,血管が締め付けられると血流が悪くなり結果冷えが生じることになります。また冷えが生じることでからだがこわばって筋肉も硬くなるので,結果血管が締め付けられて血流が悪くなり冷えが生じるという悪循環を招くことになります。
首や肩の筋肉がこれば手のほうの血流が悪くなるので,冷たい手になります。腰やおしりの筋肉にこりがあれば下半身の血流が悪くなるので,足先が冷たくなってしまいます。
したがって首や肩,腰,おしりの筋肉にこりが見つかればそれを柔らかくしなくてはいけないので,まずはりによる施術をすることになります。刺激はやさしい方がよいので刺したらなるべくはやく抜くようにします。はり施術によって筋肉を柔らかくほぐすことができれば,締め付けられていた血流も改善されるので冷えの改善プラス肩や腰のこりや痛みも改善することができるのです。
温める
温灸による温熱効果は皮膚に直接据えるものではないので,じわーっとおだやかな温かさを感じることができます。ホットストーンや赤外線ランプも比較的広い面積をほんわか温かくすることができます。また温灸やこれらの温熱器具はサウナのようなウェットな温め方と違い,冷めにくくかつ温かさに持続力があります。かつ低~中温なので足は冷えているが顔がのぼせやすいという方にも安心して施術することができます。
温灸による温熱効果は血流を改善して冷えとるだけでなく,筋肉のこりをやわらげまたはり施術の効果も高めてガチガチだった筋肉をやわらかくしてくれます。
ご自身でする冷え対策
「冷え」は体質的なファクターもありますが,生活習慣からくるファクターもかなり占めています。日常生活の見直すことからわかってくることが多いので,小さなことからでもご自身で改善していくことができます。
食事
食事をとることは,食べ物からからだを温めるエネルギーを取りいれることができるのでまず手が抜けない重要なところです。
- もともと胃の働きが弱い方は負担をかけすぎない
- 食べ過ぎないこと
- 水分やなま物の摂取はほどほどに
- 温性の食べ物をとる
- 南の国の野菜やくだものはほどほどにし,食べるなら日中の暖かい時間帯に
- 乳製品を少し控えて漬物などの発酵食品をとる
運動
もともと運動習慣のない方は,ウォーキングやストレッチなど軽めの運動をとりいれましょう。交感神経と副交感神経のバランスを整えることができます。
また腰やおしりの筋肉をほぐせるような体操も効果的です。
保温
中華料理のときの火力よりもローストビーフをじっくり焼き上げるときのイメージで,じんわりした温め方が効果的です。
- のぼせ感が強い方は,あまり強く温めすぎないようにする
- 夏も靴下は履いた方がよいことも
- からだの中心を温めて手足に体温がいくようにする
- 体温がすぐに逃げてしまうので汗をかかない程度の温度でからだを温める
- 緊張やストレスの強い時は,ぬるめのお風呂(40℃)でリラックス
- 朝,からだのエンジンのかかりが遅い方は熱めのシャワーをサーッと浴びる
- からだの中で皮膚感覚の優れている手のひらを温めると,脳が温かさをはやく感知するので全身がすぐに温まりやすくなる
まとめ
- 施術は強くしすぎず,やさしいはりや温灸でじんわりと
- 食事をしっかりとってエネルギー量を確保する
- 温性のもの,なまもの,南の国のものなど食材のチョイスやとり方に工夫を
- もともと運動習慣がなければ軽めに少しずつ
- ご自身にあった保温方法を