神奈川県藤沢市で鍼灸院をやっております。久々の投稿になってしまいましたが頭痛への鍼灸施術例をご紹介したいとおもいます。
忙しいOLさん
Kさんは31歳のOLさんです。頭痛と吐き気を訴えて来院されました。映像制作に関係する会社に勤務されていて,給料はいいが仕事は激務で連続で徹夜になることもちょいちょいあるそうです。仕事中は集中しているので徹夜も何とか乗り切れているようですが,もうじき終わりに近づいてくるとからだに不調が現れてきます。張っている気がゆるんでくるとでてくるのでしょう。
頭痛のほかKさんには
- 奥歯の痛みがある
- 眼精疲労と目の奥の痛みがある
- 吐き気をともなう
- 肩こりと背中のこりがある
- 腰痛がある
- 3センチの卵巣嚢腫がある(現在経過観察中)
といた訴えがあります。
腰痛はぎっくり腰の歴があり,整形外科で筋肉が緊張しすぎて筋繊維が委縮しているといわれたそうです。Kさんのぎっくり腰に関しては,実は以前動けないので往診することになり施術したことがあります。翌日出張があったのでなんとか動けるようになるまで施術したことがあります。片側のぎっくりだったのですがふとももの前側もカチカチだった記憶があります。
その他の奥歯と目,肩こりと背中のこりに関してはいずれも頭痛と関連性があるようです。
混合型の頭痛
頭痛の種類には
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 群発性頭痛
がありますが,このうち片頭痛と緊張性頭痛の混合型がよく見られます。
片頭痛
字のとおりおもに片側が痛む頭痛です。あくまでも片側ですよ。実際はそうではないようです。特徴として
- 閃輝暗点といって頭痛の前兆にチカチカ輝くものが見える(見えないときもある)
- 目の奥が痛む
- 日常生活に支障が出る痛さ
- 脈を打つような痛み
- 吐き気をともなうことも
などです。からだを動かすと悪化したり,光や音で誘因されることもあります。睡眠やストレスが原因のほか,頭を使う仕事についている方によくみられます。頭の回転のいい脳が活発な方に多いというわけです。
緊張型頭痛
頭痛のなかでもっとも多いタイプです。頭や首,肩,背中の筋肉が緊張して血流が悪くなり痛みが生じます。このあたりの筋肉が血管をしめつけて,結果脳にいく血流が低下してしまうからです。脳は血液から酸素や栄養を供給されて活動するからです。
特徴として
- 朝は元気だが夕方になるにつれ頭が重くなる
- 運動する習慣が少ない
- パソコン作業や暇があればスマホをいじっている
- 首,肩,背中のコリがる
- からだを温めると楽になる←片頭痛とのちがい
などです。もともと冷える体質だったりストレスを溜めこみやすいタイプに多いようです。もともと家事など下にうつ向いて作業をする主婦に多かったのですが,現代では長時間うつむいてスマホの画面に熱中してしまう若者にも増加しています。
Kさんの頭痛は?
Kさんの頭痛は整形外科で混合型頭痛と診断されていますが
- 目がチカチカする前兆(閃輝暗点)はない
- 仕事の後半~終わりにかけて悪化して,仕事終わりの翌日からしばらくつづく
- 左こめかみにズキンズキンと心臓の拍動にあわせた痛みのリズム
- 目の奥の痛み
- 首,肩,背中がこる
- 吐き気をともなう
- 冷えに弱い
- 目や頭をよく使い,パソコンや画面をじっと見ている仕事である
- 仕事の関係であまり運動することがなく,徹夜も多いことから休みの日は寝ていることが多い
という感じです。仕事が終わりに近づくにつれてストレスと疲労がピークに向かいます。そして仕事から解放されると一時的に緊張がほぐれて脳に向かう血流が急激にアップしてズキンズキンと拍動する頭痛がひどくなることが考えられます。
Kさんの場合は緊張型頭痛がベースにあり,頭をよく使うことから片頭痛をともなっているタイプのようです。
頭痛への鍼灸施術
混合型頭痛なので陽気もまだ暖かい時期だったことから,あまりガンガン温めず脚にタオルケットをかけておくだけにしておきます。鍼は筋肉をほぐさなくてはいけないので少し太め(0.25ミリ)のものをメインに使います。
Kさんに頭痛になったときどうしているかと伺うと,こめかみや肩をずっと押さえていると楽になるような気がするとおっしゃっていました。肩の場所はちょうどブラジャーの肩ひもがかかるところのちょっと首寄りで,少し盛り上がっているところです。ツボでいうと「肩井」にあたります。うつ伏せになっていただいてその部分をつまむようにすると,コリンコリンと棒状になった筋肉をつかむことができ,そうすると吐き気を催すとのことです。そこに鍼を1本だけうって5分ほど小さく雀啄(鍼を上下に動かす)します。硬くなった筋肉が2~3回プルンプルンと反応しますが,完全ではありませんが棒状になった筋肉のコリンコリンがほぐれてきました。つまんでも吐き気がしなくなったとのことです。
つづいて首と,首と頭のつけ根に鍼をします。頭のつけ根のところは眼球の方向に鍼先が向くようにうちます。すると頭痛の時に目の奥の痛む部分と奥歯に鍼の響きが伝わりました。う~っと小さくKさんがうめきますが,少し我慢してもらって響かせます。小さく雀啄を続けると目の奥と奥歯の痛みが徐々に和らいでくるのがわかるとのことです。ここも5分くらいでやめておきます。首にうつと先ほどの肩のところと左右の肩甲骨の間に響きます。ここは首の骨にコツンと鍼先をあてるよにして神経に気をつけます。
横向きに体位をかえます。耳の前,ちょうど上下のあごの骨がかみ合うところにへこみがあります。今度は細い鍼(0.16ミリ)で浅くうちます。すると下あごと頭全体に響き感が伝わります。ここも小さく雀啄して響き感が弱まってきたら教えてもらうことにして,それまで響かせました。
こめかみの後ろの頭髪部に少し入ったところに強く拍動するところがありました。指で軽く触れながら拍動にあわせてズキンズキンズキンと口に出すと,Kさんがあぁそうそうとおっしゃいます。その拍動部のすぐ後ろに浅いへこみがあるので鍼をうちました。今度は雀啄しないで刺したままにしておきます。拍動部に指をずっと触れたままにしておくと,だんだん血管がやわらかくなってくる感じがしたので鍼を抜いて施術を終了としました。
若干鍼の影響なのか頭がふわーっとしているが,頭痛はやわらいで目の奥の痛みと吐き気はもうないとのことでした。帰ったらよく眠れそうだとおっしゃっていました。
終わりに
頭痛における鍼灸施術はとくに特別な技術が必要というほどではなく,むしろ得意な疾患であるかと思います。むしろ患者さんの頭痛の特徴をつかむことが大事です。
- 頭のどこが痛むのか
- どのような痛みか
- 前兆はあるか
- 痛みの周期はどのくらいか
- 痛みはじめはいつか
- からだを動かすと変化があるか
- 温めるとどうなるか
- 頭痛にともなうからだの不調はあるか
- 日常生活と仕事,天気や食べ物などとの関連はありそうか
など,普段からご自身の頭痛の特徴やパターンをつかんでおいていただけると良い施術ができると思います。