30代女性の月経前症候群PMSに鍼灸施術

Sさんは30代の女性でお子様がひとりいらっしゃいます。排卵するころから出現するおなかの張りを訴えて来院されました。

食がほそいSさん

 Sさんは10年前に出産されたころから事務職の仕事をされています。仕事は朝早く激務でストレスはかなり感じています。帰ってきてもお風呂にゆっくり浸かりたいのですが,疲れてその気がおきないこともあるくらいです。
 5年ほど前に不安障害を覚えるようになり,動悸・呼吸困難・手のふるえ・吐き気・つばが飲み込めないなどの症状が出るようになりました。ロラゼパム(安定剤)を服用するようになってから落ち着いてくるようになり,現在は服用しなくても大丈夫なようです。
 からだは細い方で食もほそく朝はおにぎりかパンとバナナで,白湯か水を飲む習慣があります。
 月経周期は長めだったのですが数か月前に別のことで産婦人科にかかることがあって,その時から漢方薬の柴苓湯を服用するようになってから周期が30日くらいに近づいてきたそうです。

月経前症候群PMS

排卵日:だんだん近づくにつれておなかの張りが,とくに下腹部が気になるようになります。いったん楽になるのですがまたおなかの張りが気になるようになり,同時にむくみと寒気のような冷えが現れてきます。温めるとおなかの張りはやわらぐ気がします。
 
生理前:尿量は少ないがトイレが近くなり回数が増えます。この頃だけ食欲が増しおかしをたくさん食べてしまい軟便気味になってしまいます。そして気持ちが背負っているものを感じなくなると生理が始まります。
 
生理中:はじまる頃から何となく頭痛を覚えるようになり,経血は2日目がもっとも多く塊やどろっとした感じです。ところが3日目にはパタッと減ってきておりもののような出血のようなものが7日目まで続きます。経量は出産後から減ってきたそうです。
 
生理後:なんとなくだった頭痛がはっきり感じるようになります。頭痛薬を服用するほどではないのですが,生理後4~5日くらいまで締め付けるような頭痛が続きます。

東洋医学的にみて

 人間のからだの中には血液やリンパ液が流れているのですが,東洋医学ではもう一つ「気」というエネルギーが流れていると考えられています。この気は食事をしっかりとることで補充されます。この気の流れが滞るとからだの中がパーンと張ったような感じになります。「気滞」と呼ばれるのですが,排卵あたりからおなかが張ることからSさんも気滞の症状なのかなと思いました。
 ただしSさんは胃腸が弱く食もほそいことから,気の生産力がそれほど高いとは考えにくく,かなり疲れてもいるので気滞がおきるほどの気の絶対量は少ないのではないかと考えました。
 次に人間のからだの中の水分は長く滞留していると,粘っこくなって外になかなか排出されなくなってしまいます。「水湿・痰飲」といってむくみやからだの重だるさを引き起こします。
 からだの水分をさばくのは胃のはたらきによることが多いのですが,胃腸の弱いSさんはどうしても水分を長く滞留させてしまうようです。漢方薬の柴苓湯はこの水湿・痰飲の滞留を改善するのですが,服用によって月経周期が整ってきたということはSさんのからだに水湿・痰飲が悪さをしているようです。
 さらに気の力によって水湿・痰飲を排出するのですが,Sさんは気が不足していて排出することができず逆に詰まらせてしまい気の流れも悪くしてしまっているように感じます。
 またストレスは気の流れを妨げる悪さをします。仕事が忙しくストレスも感じているようなので気の流れに悪影響を及ぼしています。
 以上から,胃のはたらきの弱いSさんはからだの中の水分をさばくことがうまくできず「水湿・痰飲」を生じてしまう。また食がほそいので気の生産量が少ないため,またストレスが気のはたらきを妨げてしまい水湿・痰飲を詰まらせておなかの張る感じやむくみを生じてしまう…という見立てです。
 頭痛に関しては生理によって血液が消耗したためにおこると考え,血液が補充されてくる生理後4~5日後くらいにおさまってくるのでしょう。

施術

 施術はまずからだを温めながら凝り固まったところに鍼をしてほぐし循環がよくなるようにします。
 次に胃腸のはたらきをよくし気のエネルギーを作りだすツボと水分代謝をよくするツボに鍼をします。最後に気の流れをよくするツボを使って,もう一度からだを温めて終了としました。
 排卵付近から次の月経がはじまる頃まで3回くらい来院していただき,まずは3周期で様子を見ようということになりました。
 また朝食に温かい具だくさんの味噌汁やスープをプラスして,胃を温めることを指導しました。

まとめ

  • 月経前症候群PMSはその方の体質や生活習慣に影響されやすい
  • 胃が弱いと水分代謝が悪くなり水湿・痰飲が生じやすい
  • 胃が弱く食がほそいと気の産生量が低下しやすい
  • ストレスは気のはたらきを妨げる
  • 気が少なくはたらかないと水湿・痰飲がさらに滞留しやすくなる
  • 水湿・痰飲の滞留はおなかの張りやむくみを生じる

 月経前PMSへの鍼灸施術は,症状が現れる頃から消失するまでの時期がはっきりわかるので,それに合わせて施術します。1周期に3回を3周期くらいのペースを目安にしていますが,体質や症状が強ければもう少しかかることになります。

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